ザ・ビギニング(はじまり)

私が現在のようなトランス・チャネル、ミディアム(霊媒)となるに至った事の起こり、それは1981年、殺人現場から始まりました。ある夜、オークランドの自宅で一人静かな夜を過ごしていると、銃声が聞こえました。私は急いで外へ飛び出し、いったい何が起こったのか確かめようとしました。そこには隣人のナンシーが、彼女の家の前の芝生に静かに横たわっていました。私は、彼女が生きているかどうか確かめようと体を調べてみましたが分からず、つぎの瞬間、彼女の額に小さな銃砲があることに気がつきました。彼女が逝ってしまったと知ったとき、深い悲嘆が私を覆いました。でも驚いたことに、まもなくこの悲しみは非常な落ち着きへと変わりました。そして、彼女のエネルギーかパーソナリティーが、私の12フィートくらい上空を浮いて漂っているのが感じられたのです。その頃はまだ、魂の永遠性というものについてあまり親しみがなかったので、私はすぐにそれがナンシーのスピリットか魂であると思いました。彼女と一緒に、他の存在も浮いているように感じられました。この存在のことはよく認識できませんでしたが、今思えばあれは、彼女のガイドかティーチャーだったのかもしれません。

ある日、ナンシーが誰に話していたのかは分からないのですが、隣から彼女の声がはっきりと聞こえたことがあります。「あれは不思議な死に方だったわ。」彼女の「声」に感情はなく、ただ淡々と事実を語っているような感じでした。外では、近所の人々が彼女の家に出入りし、ポリスや救急車も到着して騒がしい様子でした。でも、この騒動の中でも、私にはナンシーが空に浮きながら、彼女の亡がらの周りで繰り広げられているせわしない様子を安らかに見守っているのが感じらました。

じつは私は、銃声を聞いた後、ライトを消した車が通りを走り去るのを目撃していました。ポリスは、私に催眠をかけて、この車についての何か詳細を覚えていないか記憶を引き出したいと、インタビューを依頼しました。私は催眠にかけられることを了解しました。そして催眠により、車のメーカーや色、モデルを思い出すことができ、この情報がナンシーをレイプし口封じしようとした殺人犯を逮捕するのに役立ちました。

この催眠の体験が私の興味を大いにそそり、私は催眠療法を学ぶ決心をしました。トレーニングをしている間、私は、自分がとても早く深いアルタード・ステーツ(通常とは違う意識の状態)へと入って行けることを発見しました。そしてまた、催眠中はサイキック現象についてとても開いた状態にあることにも気づきました。トレーナーを勤めていてくれた友人は、練習が終わりに近づくころ、私の健康状態を調べるため深い催眠状態へとリードしていきました。そのとき、私は部屋の中にとてもパワフルなエネルギーがやって来ているのを感じました。でもそれはナンシーではなく、もっと違う誰か、または何かでした。そのエネルギーはとても優しく、善意と愛情に満ちているという印象を、心と感情で受けとりました。そして私は、それが私の体に入りたがっていると感じました。とても奇妙なことです。そのことを友達に告げると、彼は「体に入らせてみては?」と勧めました。私は好奇心があったので、この存在を体に招き入れることにしました。私は驚くべき電気的なうねりを感じ、私のパーソナリティーは圧縮されて体の隅の方へ押しやられるような感じがしました。私には、そのときまだ幾分意識があり、この奇妙な新しいエネルギーが私の体を動かし、私の口と声を使って私の友人に話しているのが分かりました。

この存在は、自身のことを、肉体を持たない時間と空間を旅する意識体「エクトン」であると紹介しました。彼はリチャードの招きによってここに居ること、そしてもし許可されるのなら、これから人生へのより大きな理解について人々を助けたいと告げました。それからエクトンは、これはリチャードが何かに取り憑かれた振りをしているのではないということを友人に見せる為に、私の知らない友人に関する大切な2,3の事柄を彼に話しました。およそ5分後、私がよろよろしながらトランスから出ると、驚愕し口を開けて呆然としている友人がそこにいました。

わけが分からず、まだ眠たげな状態で友人に聞きました。「……いったい何だったんだ、今のは……!?」

何か適切な言葉を言おうと、友人が必死で答えました。「分からないけれど……、とにかく、地球上には、普段我々が関わっているようなことではないことも、いろいろとあるということだな……!」

エクトンがうまく私の声と体を使えるよう6ヶ月の間練習し、その間に私はグループと個人のカウンセリング・セッションを始めました。

このようにして、もう28年間近く続けているエクトンというパーソナリティーのチャネリングが始まりました。エクトンが初めて私のところにやって来てから、私の人生はとてもワイルドなものになりました。いい側面としては、彼の愛のメッセージを聞くに十分オープンである人々と彼の言葉を分かち合うため、世界中を旅できること。そしてそれが大きな満足感を与えてくれることです。でもときに、私の中の彼の存在は、私の中の信念の核心と、私自身が何者であるか、そしてそれがどのように現実に作用するかという理解に対しとてもチャレンジとなります。この挑戦は、私が理解していた「自分自身への真実」というものに反していたり、私の人生はただの自己欺瞞にすぎなかったのかと感じさせられてしまうため、たいへん苦痛をともないます。20年以上経った今も私はチャネリングを続けています。そして最近は、仕事の範囲が、亡くなってこの世を去った魂との交信へと広がりはじめています。

エクトンと一緒に仕事をするということは、自分を職業的にトランス・チャネルとして世の中へ紹介することになるため、時に不安さを伴います。子供の頃は、仕事のキャリアとか成功という面では、自分は医者になるとか、もっと『普通』な道を歩むと思っていました。もし誰かが、私がチャネリングを始める1か月前に「君はプロフェッショナルのトランス・チャネルになるんだよ」と教えていてくれたなら「何ということを言い出すんだ、この人は」と思い、直ちにその言葉を封印するかのように、その方へお引き取り願っていたことでしょう。今でも誰かに職業を尋ねられると、少し自意識過剰になってしまう自分がいます。

でも、私の一番明快な、安心した明るく澄んだ心の状態で自分自身について思ってみるとき、私はエクトンというエネルギーを自分の人生に引き寄せたことをとても幸運だと感じます。そして、20年以上一緒に仕事をさせていただいた何千人という方々が人生への理解を広げ、エクトンのガイダンスからの恩恵を得られているということに喜びを感じるのです。

初めのころから、エクトンがクライアントの方をアシストする方法というものは、無条件の愛、限りない創造性、そして絶対的な個人の責任というコンセプトに基づいた、深いレーザービームのような的確なコミュニケーションというかたちで行われてきました。これらのメッセージは、人類が長い歴史の中でつちかってきた、自己を奇妙で嫌な世界の中での無力な犠牲者とみなす習慣ゆえに、ときに租借するのに容易ではないものです。でも、エクトンは繰り返しくりかえし、私たちが本当は犠牲者などではなく、一人ひとりがいかにパワフルで、そして愛すべき者なのかということを語りかけてくれます。

セッションに来てくださる多くの皆さんが、彼らが世界のなすがままでいるということを拒み変化を起こそうとなさいます。ゴミで分厚く覆われた海岸線を津波が一気に洗い流すように、「自己認識」という名の神が突然表面に現れたとき、それはとても痛みに満ちたものです。この神の出現は、彼らの顔に消えることのない永遠の微笑みをもたらすというわけではなく、むしろ、彼らの日常生活の質をより良くすることに役立つ、より大きな真実の認識という気づきを運んできます。そして、変わる必要がある面に適切な変化を起こします。もちろん、変化というものは困難ではありえますが、このより深い真実というものが現れることによって、変化はより容易で穏やかなものとなり得ます。そして、より偉大な英知の為に、あるがままの姿を受け入れた上で、変わる必要があることを最優先させることが大切です。

私は、皆さんが必要とされる限りエクトンをチャネルし続けることでしょう。誰もエクトンを必要としなくなったときが、私のリタイアのときです。そのときが来るのを楽しみにしています。でも今のところは、地球での私たちの暮らしをより良いものとする為に、まだまだするべき仕事があるようです。

私たち一人ひとりが、自分自身に対して責任があります。その責任、あなたの人生についてのすべての責任をまるごと受け入れ、引き受けてください。それを愛と調和させて、あなたの特別な神のような創造性を思い出してください。そうすれば、あなたはきっとご自身で、あなたの家族と、あなたの友達と、他の誰でもあなたが一緒にそうしたいと願う者たちと共に、この地球上での天国というものをつくり出すことができることでしょう。(日本語訳 碓井真理子)

愛をこめて、

エクトンのトランス・チャネル、

リチャード・ラビン